完全習得学習におけるもう1つの大きな原則は、教材を同じ方法で二度教えるべきではないというものだ。

 もし生徒が初期の授業で苦戦したのなら、単純に、同じ説明をもう一度繰り返すべきではない。代わりに、苦戦したセクションに取り組んでいる生徒には、情報を異なる方法で提示する、新しい教材が提供されるべきである。

 異なる例、説明、または練習活動を用意することで、前回の学習方法で行き詰まってしまった場合でも、別の道筋を提示することができる。

完全習得学習よりも強力な
効果を期待できる「直接教授法」

 関連するアプローチとして、「直接教授法(ダイレクト・インストラクション)」があり、これは完全習得学習よりもさらに強力な効果を持つ可能性がある。完全習得学習は初期の成功を確保することに焦点を当てているが、具体的な指導方法について無頓着だ。

三重苦を克服した「奇跡の人」ヘレン・ケラーに学ぶ、「最初につまずいた子」の意欲を取り戻す教え方とは?『SENSEFULNESS(センスフルネス) どんなスキルでも最速で磨く「マスタリーの法則」』(スコット・H・ヤング著、小林啓倫訳、朝日新聞出版)

 それとは対照的に、直接教授法のカリキュラムは、複雑なスキルを体系的にその構成要素に分解し、提供される指導の順序を厳密にテストすることで機能する。最終的な成果物は、高度に台本化された一連の授業であり、例題や教師主導の練習、フィードバックが素早く交互に行われる。

 いくつか技術的な違いはあるものの、完全習得学習と直接教授法はどちらも才能の有無にかかわらず、すべての生徒が学習できるという原則に基づいている。

 そして、それを確実に実現する方法は、例示、練習、修正的フィードバックのサイクルを綿密に監視することであるとしている。