初期の成功体験は好循環を生み出す。読む学習を始めたばかりの生徒が、言語の音と綴りのパターンをしっかりと把握していた場合、同級生よりも少ない労力で読むことができるだろう。そうした労力の軽減は、読書量を増やすことにもつながる。

 そしてより多く読むことで、明示的に教えられなかったものも含め、音と綴りのパターンをさらに習得していく。初期に読解力を持っていた人々は成功を体験し、自分自身が読解力を持つ人物だと認識して、練習を続け、さらに習熟度を高めていくのである。

 読解力に関する研究は、ある重要な原則を示している。初期の経験は、単にスキルを実行するための基礎を築くだけでなく、長期的な取り組みにつながる興味を持続させるためにも重要であるという点だ。

 残念なことに、多くの教室では、最初に苦戦した生徒がそのまま取り残されてしまう。

 前提となる教材をマスターできないことで、その後の授業についていけなくなり、宿題はイライラするほど難しくなり、実生活でそのスキルを応用する機会はますます少なくなっていく。

1対1の個別指導で
学力は大きく向上する

 それが続けば、こうした初期の経験が否定的な自己概念、つまり「私は数学ができない」「私は芸術的ではない」「私は語学が苦手だ」などに固定化してしまうことは容易に想像できる。

 そうではなく、何かを習得するという初期の経験が、学習と練習へのさらなる努力の投資を促すような、肯定的なフィードバックループを作ることが望ましい。

 初期の成功がより大きな学習成果を生み出すという好循環を達成する1つの方法は、1対1の個別指導である。ヘレン・ケラーと彼女の教師の深い関係は、その顕著な例だ。

 アン・サリヴァンはケラーに手話アルファベットや読み書きを教えただけでなく、大学にも同行し、ケラーが講義についていけるように口頭での講義内容を忠実に書き写した。直接的な指導関係は強力である。

 教師が生徒のニーズに合わせて教材を迅速に調整し、必要に応じて説明を加えたり、生徒が自分で知識を応用する練習が必要なときは、手を引いたりすることができるからだ。