男性が一般的に、専門的な能力を開発する機会に恵まれた総合職に配置されたのに対して、女性はしばしば賃金が低く、ルーティン的な事務仕事が中心となる一般職をあてがわれたのである。
さらに「女性は家事に専念するべき」という旧来のパラダイムを解消することの難しさも明らかになっていった。過去数十年の間に、より多くの女性たちが公的な場へと進出してきたにもかかわらず、依然として家事や育児の大部分を担うことを求められている。
2021年、日本は世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2021」で、156カ国中120位にランク付けされた。この報告書は、「経済的活動への参加と機会」、「教育到達」、「健康と生存」、「政治的エンパワーメント」の4つの主要な尺度から算出されたものである。
もちろんこれらの尺度が、必ずしも日本の女性たちの実際の幸福度を測るわけではないが、現在の日本のフェミニストたちは、依然として1970年代と同様の課題に取り組んでいるのである。
ユーミンが夫の性を名乗ることに
落胆した女性も多かった!?
では、ポピュラー音楽に限ればどうだろうか?
ユーミンのような女性シンガー・ソングライターたちは、ポピュラーソングの中で描かれる女性像を広げたが、1970年代と同じように、現在でも男性によって構築されたパブリックイメージを持つポップアーティストは数多く存在している。
振り返ってみればユーミンの作品は、フェミニズムが商業的な概念として扱われるようになったのちに1970年代の女性メディアを通して普及した「自立した女性」の、現実逃避的なイメージと同類なのかもしれない。
セツ・シゲマツ(編集部注/日本研究者)が説明するように、こうした雑誌で描かれた「自立したコスモポリタンなライフスタイル」は、大多数の女性にとって実際に経験した現実ではなかったが、この「イメージと現実との間に生じるズレと矛盾」が、「移動と選択の自由や、このようなライフスタイルを象徴する商品への欲求」を駆り立てたのである。