12使途とキリストのイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

今年5月、レオ14世が第267代ローマ教皇の座に就いた。ローマカトリック教会に新たなリーダーが誕生したわけだが、はるか昔、教会の「初代リーダー」とも言える男は実はとんでもなくドジな男だったことをご存知だろうか。空回りの自信、そして決定的な裏切り。そんな人物に、イエスはなぜ重要な役割を託したのか。※本稿は、MARO『聖書のなかの残念な人たち』(笠間書院)の一部を抜粋・編集したものです。

湖の上を歩くイエスを
真似して溺れるペテロ

 イエスにはたくさんの弟子がいました。12人の使徒たちはその代表格ですし、さらにその中でも筆頭と言えるのがペテロという人です。ペテロはイエスが十字架にかかって昇天した後、使徒のリーダー、つまり原始キリスト教のリーダーとして他の弟子たちと一緒に教会を建て上げ、現在のキリスト教の土台を作った人です。

 しかしそのペテロも、特にイエスの昇天前までは残念なエピソードに事欠かない人物です。

 ペテロは一言で言えば「お調子者」な人でした。あるときは、イエスが湖の上を歩く奇跡を起こせば「僕もやってみる!」と挑戦して、一瞬はうまくいったのですがすぐに溺れて、「信仰の足りない奴だな」と叱られてしまいました。

 あるときは、イエスが弟子の足を洗って「リーダーはみんなに仕える者でありなさい」というお手本を示したのですが、ペテロは「そんな、イエス様に足を洗ってもらうなんてもったいなすぎる」と断り、イエスに「それじゃ手本にならないじゃないか」と言われると、今度は「じゃあ、ついでに頭も洗ってくれませんか」と図々しいことを言って怒られてしまいました。