「営業力」以外にも
重視される能力とは?
不動産大手3社について、ニッセイ基礎研究所の佐久間誠氏は「三井不動産は東京ドームの買収や明治神宮外苑再開発など、エンタメ領域にも積極展開し、事業領域を横に広げている。三菱地所は欧米・アジアに運用拠点を持ち、投資運用業務の国際化を推進している。住友不動産は、国内については堅実に自己保有物件を中心に事業を展開し、収益性重視の路線をとっている一方、海外では成長市場であるインドに大型投資を行うなど、メリハリのある事業方針が特徴である」と分析する。
これらの企業の共通点として、「不動産業の境界線が曖昧になっている」ことが挙げられる。まちづくり、ポイント事業、エンタメや宇宙開発などへと活動が拡大し、不動産の概念そのものが広がりつつある。
業界内では契約・重要事項説明のオンライン化、タブレットやVR/AR(拡張現実/仮想現実)の活用、登記情報の自動取得など「不動産テック」の導入が加速している。特にコロナ禍後は、顧客層のデジタルネイティブ化も進み、効率性や体験性を重視するニーズに応える動きが強まっている。土地の仕入れや価格査定に関しても、AIやデータベースによる効率化が進んでおり、業務全体の高度化が進行中である。
不動産業界、特にデベロッパー各社は、従来のオフィス開発に加えてエンタメ事業やグローバル投資など多角的な展開を進めており、それに伴い採用される人材にも多様な専門性が求められている。
そんなデベロッパーでは不動産開発に限らず、まちづくりや投資運用、IT活用など幅広い分野の知識が求められており、「知的体力」が重要な素養となっている。また、膨大な関係者と長期にわたる調整を行いながら、粘り強くプロジェクトを遂行する力も必要だ。
そんな中、求められる人材像は、従来のような「歩合制で物件を売りまくる営業マン」ではなく、より幅広いスキルを持った人材へとシフトしている。ゼネラリスト的な資質を持ちつつも、英語力や海外志向、デジタルリテラシー、論理的思考などが加味される傾向があり、「元気がある」「人当たりが良い」といったソフトスキルも重視される。また、建物や都市が実際に形になる事業ゆえに、目に見える成果を残したいという志向を持つ学生との相性も良いとされている。
三井不動産、三菱地所、住友不動産といった大手デベロッパーは、かつてよりも人気企業としての地位を確立し、東京大学や京都大学などの難関国立大学、早稲田大学や慶應義塾大学といった難関私立大学の学生が進路として志望するケースも増加している。
では、どんな人材が不動産業界で求められているのか見てみよう。