専門性が大いに生きる
AI時代の新・不動産就活

■専門性と統合力
 学生時代に特定の分野を極める経験は高く評価される。数学、建築、コーディングなど分野は問わず、一つのことを突き詰めた経験が、就職後に活かされる機会は多い。不動産開発には建築・法務・管理・ITなど多分野の知見が交差するため、特定分野の専門性と、他分野と連携できる統合力が同時に重要視される。

■調整力と対人対応力
 デベロッパーやハウスメーカーへの就職は狭き門であり、例えば三菱地所でも採用人数は年間50人ほどだ。入社後は安泰とされつつも、実際は多くの社員が非常に高い労働負荷の中で働いており、プロジェクトへの熱意やコミュニケーション能力が成功の鍵を握る。また、ステークホルダーが多岐にわたる(設計会社、地権者、地域住民など)ため、調整力と対人対応力も重要とされる。

■デジタル人材とテック活用力
 近年はオープンハウスなどを中心に、AIを活用した図面作成、契約・重要事項説明のデジタル化、登記情報の自動取得システムなど、不動産業界にもテクノロジーの波が押し寄せている。特に若い世代はデジタルに強い世代として期待されており、こうしたツールを使いこなす素養も大きな武器となる。SNSを使った顧客対応やAR/VRを活用した接客も実用化が進んでおり、今後の人材には柔軟なITリテラシーが不可欠である。

■海外展開への適応力
 住宅業界では人口減少を背景に海外事業への展開が加速している。住友林業や積水ハウスなどはすでにアメリカなどでの展開を強化しており、今後の採用でも「海外志向」や英語力、異文化理解などがより重視されていく見通しである。

 他に、注文住宅分野では人手不足や顧客層の変化に対応するため、営業の手法も変化している。たとえば戸建住宅を販売する営業職においては、従来の訪問型・飛び込み型営業から、住宅展示場やITを活用した来場予約ベースの接客型営業へとシフトしており、それに応じて人材像も変化している。AIやDXに関心のある学生や、無理なく顧客と向き合えるタイプの人材が歓迎される傾向がある。

 このように、不動産業界における採用は、単に建物を扱う技術者というより「都市を構想し、人と協働し、テクノロジーとともに未来を築ける総合的な人材」を求める方向に進化している。

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