人類の長い歴史を考えると、最初は共同体が中心でしたが、だんだんと機能集団へと変わって、さらに現代は消費社会、競争社会になりました。

 そうした消費社会、競争社会で誰もが簡単に生きられる方法が競い合うように売られています。また、誰もが競ってそれを買っています。

 その場は楽かもしれません。言ってみればこれは、お酒を飲んで寝てしまえば、忘れていられるという消極的解決です。しかし、酔いがさめて目覚めた時の現実は何も変わっていません。

 我々はいま、こうした消費社会に生きているのです。

 だから、どうしても人間は不安になってしまうのです。

書影『不安をしずめる心理学』(加藤諦三、PHP研究所)『不安をしずめる心理学』(加藤諦三、PHP研究所)

 このように新型コロナウイルスの問題以前から、人間は精神科医のカレン・ホルナイが言うような「ベーシック・アングザイアティ(基本的不安)」の状態にありました。

 人は他人に関心を持たれて、また自分も他人に関心を持ち、他人とのかかわり合いができることで心の支えが生まれます。

 ところがいまは、拠りどころとなるものがない時代です。自分を頼りにできれば、自分のしていることにも納得できるのですが、いまは確かなものが何もありません。確かなものが何もないにもかかわらず、激しい怒りや不安の感情が湧いてくるという人もいるでしょう。

 信じられるものがないことが一番の問題なのです。

 自分も他人も信じられないから不安を覚える。しかし今は、何も心配せずに「そこにいていい」場所がない。だから、人々は安心できる居場所を求めているのです。