競争社会とそうではない社会とでは、我々が感じる不安はまったく違います。
競争社会は、勝つか負けるかという社会です。勝つことでしか不安から逃れられない人は、早く結果を出そうとして焦る。いましていることの結果を気にして、いつまでも不安です。
消費社会は「これを買えば、こんないいことがありますよ」という商品をどんどん売る社会です。このクリームをつけたら「10歳若返ります」「きれいなお肌になります」「このハンドバッグを持ったらすてきに見えますよ」といった具合に商品を売りつけます。
要するに、消費社会は「安易な解決を可能にする商品を競って売る社会」なのです。
安易な解決を求めるというのは、社会全体が神経症に陥っていることを意味しています。
人は生きている以上、さまざまな苦しいこと、大変なことに直面しますが、そうした苦しみに対して「こうすれば解決できる」と言う人がいると、安易な解決法を求めて、多くの人がその人のところに集まってしまう。
いわば消費社会とは、みんなが一生懸命、神経症に向かって走っているような社会。しかも、それを社会として推奨しているのです。
にがすぎる良薬は
誰も口にしたくない
人生を生きるのは本当に大変で、人間は誰もが幸せになるようにプログラムされているわけではありません。
そうであるにもかかわらず、「これを読めば幸せになれます」という本がどんどん出版されます。どうすれば簡単に不安を消せるか、といった内容の1時間か2時間で読める本を出版社も求めるのです。
もちろん、それほど簡単に不安を消すことなどできませんが、だからといって本当に不安を消すことができる方法を説いた、実践することが難しい内容の本は、出版社から発刊を断られます。