大きな権力を手にしているからこそ
高い倫理観と責任感が求められる

 何よりも重要なのは、そもそもハラスメントが起こらないような職場を、作り上げることである。

 そのためには部局で誰もがハラスメント以前の段階から自らの抱える問題を相談しやすい、風通しの良い環境を作り上げる必要がある。なので、筆者はできるだけ多くの学生や教職員に声をかけ、さまざまな情報を集めることにしている。

 大学教員はただでさえ、若い頃から「先生」と呼ばれて勘違いしやすい仕事であるのみならず、ずっと学生と接しているせいか、自らが若いときと同じように彼らも対してくれると錯覚しがちである。

 しかし現実には、学生や事務職員は大学教員の機嫌を損ねないように、ときに大きな配慮を払っている。

 だから、「大学教授の仕事」は、気が付けば「裸の王様」になりやすい仕事であり、ましてや部局の長である部局長や、本部の役職者になればそうである。

 だからこそ我々は積極的に研究科長室や役員室を出て、事前に状況を把握し、誰もが相談に来やすい環境を作る必要がある。「事件は現場で起こっている」以上、現場から乖離していては、問題の解決など不可能だ。

 大学教員の多くは、裁量労働制の下にあり、その教員としての「権力」はキャンパスにいる間のみに留まらない。自由な裁量と引き換えに高い倫理と責任感が求められていることを自覚しなければならないのだろう。