セブンは北米コンビニをIPOして成長できるのか

 企業の買収劇では、被買収企業がその中核資産=クラウンジュエル(王冠に乗っている宝石)を切り離し、買収者の意欲を減らそうとすることがある。これをクラウンジュエル作戦、あるいは焦土作戦と呼ぶ。

 振り返ればセブンは20年、米マラソン・ペトロリアムからガソリンスタンド併設型コンビニのスピードウェイを買収した。この買収により、北米事業の拡大のみならず、セブンの弁当や調理パンなどの食品メーカー・わらべや日洋なども含めて商品開発、物流体制の底上げにつながった。しかしセブンは今、北米コンビニ事業をIPOで手放す覚悟を示している。

 ただ、北米コンビニ事業のIPO後、セブンの収益基盤は不安定化するリスクも浮上した。クシュタールが買収提案を取り下げた直後、セブン株は下落した。クシュタールは、買収提案前の株価に対して最大48%のプレミアム(上乗せ価格)を付けていた。しかし、そうした期待はいったん消失することになった。

 北米コンビニ事業のIPOで、何が起きるのか。どの程度の株式を売り出すかにもよるが、まず、セブンの北米事業が株主の利害に影響されやすくなることは必至だ。買収劇の他にも近年、セブンはアクティビスト投資家(物言う株主)との利害調整にてこずってきた。主要投資家は現時点では、北米事業のIPOはセブンの成長加速よりも、収益の不安定化につながると考えているようだ。

 セブンは、米国事業に続く成長分野を早急に開拓する必要がある。ターゲットになりそうなのは、人口増加で中長期的な個人消費の拡大が見込まれるインドやインドネシア、ベトナムなどアジアへの出店を加速することだろう。

 過去にインドやインドネシアには進出しているが、苦戦を強いられた。米子会社(7-Eleven, Inc.など)がインドに出店しているが攻勢をかけるには至っていない。インドネシアでは17年に事実上の撤退に追い込まれた。再進出も検討しているはずだが、飲酒規制や商慣習の違いにどう対応するか、現時点で不透明な部分は多い。