創業者ヘンリー・フォード自身も、「それが黒である限り、顧客はどんな色のT型フォードも選ぶことができる」とジョークを言ったそうです。
自動車の普及によって石油の需要が高まり、化学産業も発達しました。プラスチックや合成繊維の研究が進み、さまざまなものに利用されるようになりました。
いまでもよく見かけるナイロンは1935年に、テフロンは1938年に、いずれもアメリカの化学会社デュポンで発明されました。
自動車産業や化学産業だけでなく、電気産業も大きく発展しました。動力革命と呼ばれる、蒸気機関から電動機への転換が起きました。扇風機、アイロン、ラジオが普及したのもこのころです。日本では1910年に日立製作所、1918年に松下電気器具製作所(現・パナソニック)、1939年には東京電気と芝浦製作所が合併して東京芝浦電気(現・東芝)が誕生しました。
他社との差別化に
力を注いだ1950年代
1950年代以降も工業化は続きますが、少し方向が変わってきます。それまでの大量生産から、差別化の時代へと移りました。差別化とは同じ製品カテゴリーのなかで、他の企業とは違う製品を提供することです。
複数の企業から同じような製品が提供されていれば、消費者は一番安いものを買います。当然、企業の利益は少なくなります。しかし他の企業にはみられない、独自性の高い製品であれば、少し高くても買ってくれる可能性が高まります。そこでカラーバリエーションを提供したり、細部のデザインを変えて新製品にしたり、ちょっとした付加機能をつけて他社との違いを訴えたりすることが盛んになりました。
こうして世の中では多様な種類の製品が発売され、「安くて良い」だけでなく「他と違う」ことが魅力として訴えられるようになりました。同時に、計画的陳腐化(デザインや機能が少しだけ違う新製品を次々と導入し、まだ使える製品の買い替えを促すこと)という非倫理的な行動も目立つようになりました。