昨今の消費潮流は「ヒト消費」(個人の持つ魅力や物語をエンターテイメントとして捉えて消費すること)の局面にあると考える筆者。その一つの側面が「推し活」に代表される「応援消費」、もう一つが「物語消費」だ。エンターテイメントとして消費される人々の物語消費の3つの型を解説する。※本稿は、廣瀬 涼『あの新入社員はなぜ歓迎会に参加しないのか:Z世代を読み解く』(金融財政事情研究会)の一部を抜粋・編集したものです。
ビックリマンチョコのシールは
デザインと物語によって人気を得た
「ヒト消費」には「推し活」に代表される「応援消費」と「物語消費」という2つの側面がある。
「物語消費」とは、1989年に作家の大塚英志が提唱した消費形態で、商品自体が消費されるのではなく、商品購入を通じて背後にある「大きな物語」(世界観や設定など)が消費されているという考えである。
たとえば、1980年代に社会的な大ブームとなった「ビックリマンチョコ」は、ウエハースチョコではなく、同封されているシールが子どもたちを熱狂させた。シールに夢中になったのは、シールのデザイン性だけでなく、シールに描かれたキャラクターが持つ物語に魅了されたからである。
1985年から発売された「悪魔vs天使」シリーズでは、シールの裏面に断片的な情報が書かれており、それらを集めて組み合わせるとみえてくる物語によって人気を得た。物語消費は、作者や制作会社が用意したシナリオ(世界)を消費者が消費することで成立したものだといえよう。
しかしよくよく考えれば、“物語”はフィクションの世界だけのものではなく、私たち1人ひとりが持つ人生そのものも“物語”であり、私たちはときに他人の物語を消費することで感動や娯楽を得る。エンターテインメントとして消費される人々の物語は、主に(1)ノンフィクションドキュメンタリー型、(2)企画型、(3)コンテクスト型の3つに分類できると筆者は考える。
エンタメ消費される人々の
物語を3つの型に分類すると
(1)ノンフィクションドキュメンタリー型
他人の人生の一側面をいわばコンテンツとして捉え、彼らの生活や体験談という、つくられていない物語に笑ったり涙したりすることを指す。たとえばスポーツ選手の生い立ちや、スラム街の子供たちを題材にしたドキュメンタリーなど、他人の生活様式に対して共感する、あるいは、何かを達成するまでの過程に心動かされることは多い。私たちは、メディア等を通して知る人々の生きざまに心を打たれるのである。
(2)企画型
第三者が用意したシチュエーションのなかで垣間見られる人間模様をコンテンツとして扱い、娯楽性を見出すのが企画型である。