なお、子ども数は男女とも収入に影響するとは統計的には言えない結果になりましたが、係数の符号は男性で正、女性で負になっています。

 それに加えて、男性と女性の間で異なる影響関係が存在することが、図表3-7からは見出されます。

 男性の場合は、「大学第1世代」である場合に収入がやや少なくなります(月収で(3.9万円減)。

 なぜ男性の「大学第1世代」で収入が少なくなるのかについて、これ以上詳しいメカニズムの分析をする材料がありませんが、推測するに、たとえば親世代が大卒ではないことにより就職活動や企業内でのふるまい方などがやや不利になっている可能性が考えられます。

 女性では「大学第1世代」の影響が表れない理由は、女性はそもそも「大学第1世代」の割合が少なく、女性全体のケース数が少ないことなどが関係しているかもしれません。

 また、男性では転職経験が1回の場合に、転職しなかったケースと比べて収入が高くなります(月収で4.6万円増)が、2回以上の転職にはそうした効果はなく、女性では転職経験と収入の間には統計的に意味があると言える関連はありませんでした。

同じ東大卒でも公立高校出身者は
名門国立・私立組に稼ぎで負ける

 男性では転職経験が1回の場合に収入が上がるという傾向は、開成高校と灘高校から東大を経て仕事をしている者を分析した、教育社会学者の濱中淳子の研究でも同様に表れていました(注2)。

 こうした傾向の理由として濱中は、1回の転職が「さらに高い評価を受けるような「ねらいを定めた転職」」であるからではないか、と解釈しています。東大卒業生の、特に男性にとっての転職が、より良い条件の仕事に移っていくという積極的な意味合いの転職であることをうかがわせます。

 1つの組織の中で「庇護」(編集部注/大企業および官公庁等に就職しやすいことを、筆者はこのように表現している)され続けることは、収入面では有効な策ではないようです。

 ただし、女性ではこうした1回の転職の効果は表れていません。ライフイベント等からの影響を受けがちな女性にとっての転職が、必ずしも「ねらいを定めた」ものとは限らないことがうかがわれます。

(注2)濱中淳子『「超」進学校開成・灘の卒業生――その教育は仕事に活きるか』ちくま新書、2016年、42頁。