まず、前提として人体と血糖値の関係を説明します。血中を流れる糖は、それぞれの細胞内に取り込まれ、エネルギーとして活用されます。すると、結果的に血中の糖が減少し、その濃度=血糖値が正常な状態に保たれるわけです。
この「糖を細胞に取り込む」という作用を有するホルモンがインスリンです。インスリンが作用しないと血中の糖を細胞内に取り込めず、血中の糖の濃度が上昇し高血糖という状態になります。
歯周病の炎症状態が亢進すると、歯周病由来の炎症性サイトカイン(編集部注/免疫系細胞から分泌されるタンパク質のこと)であるIL-6やTNF-αなどが血中に放出されます。
すると、それらの作用によって、糖を取り込む細胞側でインスリンに対する受容体の反応が鈍くなり、結果的に細胞が糖を取り込むための入り口がブロックされてしまいます。そうすると血液中の糖の濃度が上がり、高血糖になってしまうのです。
高血糖の状態を放置しておくと、インスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が疲弊し、糖尿病状態を進行させると考えられています。
糖尿病治療には
歯周病治療が必要
さて、歯周病を放置しておくと糖尿病になりやすいかどうかですが、アメリカ健康栄養実態調査(注1)(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)の結果から、歯周病の重症度は、平均で17年後の糖尿病の新規発症リスクと有意に相関することが示されました。
また、歯周病の重症度によって耐糖能異常(血糖値の上昇)が生じるオッズ比は2~3倍に上昇していたと報告され、重度の歯周病は、耐糖能異常あるいは糖尿病の発症に影響を与える可能性が示唆されました。
もちろん歯周病だけで糖尿病を発症するわけではありませんが、肥満などの要因があり、リスクが高い場合には注意すべきと考えます。