ただ、重篤な歯周病の場合は歯科医院での処置にとどまらず、歯磨きでも血中に口腔内の細菌が入ってしまう可能性があります。歯根膜は広げれば手のひらくらいの大きさですが、そんな大きさの炎症が起きている(編集部注/歯根膜とは、歯の根っこを覆っている薄い膜のこと。厚さ0.2~0.3ミリメートル程度の薄い膜。歯周病とはこの歯根膜が破壊される)ということは、そこから有害なものが体の中に入ってゆくのは想像に難くないと思います。
こうした歯周病と全身の状態との関連は多く指摘されており、特に解明が進んでいるのは、糖尿病との関係です。
また、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や誤嚥性肺炎などの呼吸器系疾患、認知症、早産などの周産期障害などとの関係が指摘されています。
歯周病を放置すると
高血糖から糖尿病に悪化
それでは個別の疾患について見ていきましょう。現在、最もフォーカスされているのは糖尿病との関係です。
糖尿病は、膵臓から分泌されるホルモンのインスリンが分泌不足になるか、分泌されても十分にはたらかないために血糖値が慢性的に高くなる病気ですが、以前より、糖尿病になると細菌感染に弱くなるため歯周病が重篤になることが指摘されていました。
しかし近年は、逆に、歯周病があると糖尿病の症状、つまり血糖のコントロールがうまくいかなくなること、2型糖尿病(遺伝的な要因に肥満や運動不足などの生活習慣が加わって発症する糖尿病)では歯周病治療により血糖値が改善される可能性があることがわかってきており、糖尿病診療ガイドラインにも記載されています。
そして、糖尿病患者には、歯科を受診して歯周病を治療することが推奨されています。
では、歯周病と糖尿病は具体的にどのように関わっているのでしょうか。ここで、歯周病が血糖のコントロールに影響を与えるメカニズムについて、簡単な説明を加えておきます。