マスク氏がビジネスや経済以外の話題で国際的に大きく報じられたのが、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻の際だった。
通信回線を遮断されていたウクライナの副首相がSNSで「イーロンさん、火星に行くことよりもウクライナを助けてください」と投稿したところ、マスク氏が自社で開発していた通信衛星受信端末であるスターリンクを無償で提供。これによりウクライナはロシアの妨害を受けながらも通信を確保することができ、情報発信や抗戦ができるようになったのである。
選挙を経ずに政権入りした
マスクが握った巨大な権限
その後、マスク氏は大統領選のさなかに、トランプへ多額の献金を行い、距離が近づいたことで政権発足後に政府効率化省を取り仕切るトップとしての役割を任されることになった。
発足直後から、職員を大量解雇する、政府機能の一部を停止するなどやりたい放題だが、「マスク氏は選挙で選ばれた人間ではないのに、政府組織を解体する権限を与えられているのはおかしいのではないか」との批判が高まった。
するとトランプは、各省庁に対し、「政府効率化省を率いるマスク氏と協力すべし」との大統領令に署名。マスク氏は大手を振って政府内で辣腕を振るうことができるようになった。
政府効率化省は、本来は正式な役所ではなく、政府を外側から監視し、組織の効率化を提言する役割を担うとされていた。ところが、政権発足後はデジタルサービス局を政府効率化省に組み込み、晴れて役所クラスに昇格。マスク氏もいわば大臣クラスの立場を得たことになる。
しかしそのスタンスはと言えば、行政組織を敵視し、「一部を残すのではなく、政府機関全体を廃止する必要がある」「雑草を取り除かなければ、また生えてくる」「現在、約450ある政府機関を99にまで減らすべきだ」などと、行政組織を根底から壊してしまうほどの勢いだった。
さらに、各省庁にもマスク氏の息のかかった人員が乗り込んでいる。マスク氏の秘書やスペースⅩの従業員など、政府職員らしからぬ人々が入り込み、トランプ=マスクの意向に沿う方針で行政が行われるかを監視している。
政府の効率化を名目にマスク氏が行っていることは、とにかく職員の解雇・規模と予算縮小の一本やりだ。