しかし、急激な職員の大量解雇による問題も顕在化している。アメリカの核兵器の備蓄管理を行うNNSA(国家核安全保障局)の職員300人余りが突如、解雇されたことにより、国家安全保障に深刻な影響が及ぶことになり、急きょ解雇が撤回されたという。今後もアメリカの各行政機関において、こうした問題が浮上することは明らかだろう。
官僚の首を切った穴は
AIが埋めてくれる
マスク氏の思想は「テクノ・リバタリアン」とも呼ばれる。
プログラマーなどテック業界で実績をあげてきた自由至上主義(リバタリアン)的な人々は、AIを自在に駆使し、まるでプログラムを構築するように、現実世界を再設計すべきだ、再設計できると考える。

彼らは技術を重んじる視点から「官僚の数が大幅に減っても、テクノロジーやデータによって社会を管理することが可能である」と考えているのかもしれない。
しかし、デジタル技術を国家運営に広く取り入れることは、政府による個人情報の収集や行動の追跡を容易にし、監視社会へとつながる危険性もはらんでいる。技術的には、こうしたマッチングはおそらく容易に実行できるだろう。ともすれば、中国やロシア以上のテック監視国家が誕生しかねない。
トランプ政権は一方ではキリスト教保守派の影響を強く受け、LGBTQ+(性的少数者)や人工妊娠中絶に対して厳しい姿勢を取る。同時に、テクノ・リバタリアン的な発想も持ち込まれ、まさに「宗教とテックの複合国家」の様相である。