
心臓からのメッセージをいち早く察知
実話だった、九死に一生を得た男性のCM
「こうしてまた好きな音楽を楽しめることがありがたいです」――テレビで放映されたApple WatchのCM「心臓からのメッセージ」に、ヒトミさん(神奈川県在住)はハッとした。
CMはヘビメタ好きなApple Watchユーザーに起きた実際の話。ある日、腕時計から「心電図に心房細動の兆候が見られます」との通知を受け取った男性(51歳)は、気には止めたもののスルーした。しかし、数カ月後、ロードバイクで走行中、今度は心拍数が異常に高くなっているとの通知に気付き、心電図を2回測定。するとまたも「心房細動かも」の表示が出て、急ぎ病院を受診。手術を受けて命拾いし、お陰で今も大好きなヘビメタのライブを楽しめているというものだ。
ヒトミさんの長女は大学1年生。中学1年と高校1年の健康診断で不整脈を指摘され、大学病院で精密検査を受けた。器機を装着して24時間に渡り、心臓の動きなどを記録する「ホルター心電図」検査だ。結果は2回とも異常を捉えることはできず、「ひとまず心配なしということで、様子を見ましょう」ということになっていた。
だが、長女は時折、「今、心臓がすごい速さで動いているよ」と言い、実際手をあてがってみると、トトトトと徒競走のように拍動している。この数年間、「娘はいつか突然倒れてしまうのでは」という不安が、ヒトミさんの中から消えることはなかった。
心房細動は、頻脈や徐脈といって脈が速すぎたり遅すぎたりする「不整脈」が生じ、最悪の場合、死に至る脳の病気「血栓性脳梗塞」を引き起こす。つまり、心臓の病気でありながら、重大な脳の病気の原因にもなる恐ろしい病気だ。
症状が少ない、あるいは軽度の場合もあるが、重症化するリスクも極めて高い。高齢化に伴って患者数は右肩上がりで増えており、日本の推定患者数は100万人以上。著名人では、去る6月に亡くなった長嶋茂雄元巨人軍監督やイビチャ・オシム元サッカー日本代表監督、橋本龍太郎元首相も、心房細動から脳梗塞を発症したと見られている。
患者の多くは高齢者だが、小児や10代、20代の若年者でも発症する可能性はある。
「これを着ければ、危険な兆候を早く察知して、治療につなげることできるかな」。ヒトミさんはさっそく長女にApple Watchを買い与えた。