「Apple Watch」だけじゃない
スマートウォッチに医療現場も注目

 近年、スマートウォッチのヘルスケア機能が画期的な進化を遂げている。冒頭のように、命の危機を早期に察知して検査・治療につなげ、大事に至るのを未然に防いでいる事例もある。注目すべき機能の具体例や医療現場での活用例、今後の課題についてなど、脳神経外科医でデジタル医療にも詳しい東京慈恵会医科大学の高尾洋之氏に聞いた。

「怖い!心臓がすごい速さで動くよ…」Apple Watchで“死病”を予防、スマートウォッチが命の恩人になる日高尾洋之
東京慈恵会医科大学脳神経外科兼先端医療情報技術研究部 准教授
2018年8月14日にギラン・バレー症候群に罹患し、障がい者となり、現在リハビリ回復中。いろいろなデジタル機器によるアクセシビリティ技術を駆使して仕事をしている。

 日本で初めて保険適用となった医療用アプリ「Join」を開発し、政府の情報通信技術に関する戦略室の補佐官も務めるなど、医療の世界におけるIT推進の先頭に立ってきた第一人者だ。

 高尾氏は言う。

「スマートウォッチのヘルスケア機能は、以下に示した通り『病気の早期発見』『生活習慣の改善支援』『治療のフォローアップ』といった幅広い用途で実用化が進んでいます。Apple WatchやFitbit、Samsungなど海外メーカーの成功例をはじめ、日本企業の参入も相まって、ウェアラブルデバイスは個人の健康管理と医療の橋渡しをする存在になりつつあります」

 以下に、現在のスマートウォッチの代表的なヘルスケア機能を上げてもらった。

・心房細動の早期発見

 Apple Watchをはじめとするデバイスでは、不規則な心拍リズムを検知して心房細動の兆候をユーザーに通知する機能がある。冒頭の事例のように、日常的に脈を測定し、心房細動を示唆する不整脈を捉えると「ぜひ医師に相談してください」といった強いメッセージで警告してくれる。この機能のお陰で、自覚症状のないユーザーが早期に心房細動に気付き、医療機関での検査・治療につながったケースも報告されている。

 こうした心電図アプリや不規則心拍通知機能は日本でも医療機器認証を取得しており(Apple Watchの場合)、日常生活での脈監視によって脳梗塞など深刻な合併症のリスク低減が期待される。