1人目に会うことで
流れが大きく変わる

 これはふたつの意味で言えることです。ひとつ目は、人はひとたびこの人と定めて主体的に会うことを経験すると「会えるわけがない」という固定観念が外れ、「会えるかもしれない」と思えるようになること。さらに経験を積んでいくと「会える可能性は十二分にある」というメンタリティにまで変わっていきます。

 もうひとつの意味。それは、1人に会えると一気にネットワークが広がっていくということです。トップランナーや達人と呼ばれる方同士は、想像以上に交流し、刺激を受け合っているように思います。また、積極果敢に何かに挑戦する人を応援しようと思ってくださる方が多いように感じます。

 たとえばコシノジュンコさん。ご縁をいただいたのは、高田賢三さん(正しくははしごだか)へのインタビューがきっかけでした。アトリエがあるパリの自宅での取材終了後、僕やロンドンから駆けつけてくれた撮影スタッフをねぎらうようにシャンパンをふるまってくださいました。

 そして「わざわざフランスまで来てくださりありがとうございます。自分に何かできることはありませんか」と賢三さん。あまりに謙虚で優しい彼に感動と感謝の念を覚えつつ、僕は僭越ながら「賢三さんの周りに、インタビューしたら面白いのではないかという方はいらっしゃいますか」とご相談させていただきました。

 すると、ひと呼吸おいて「それならジュンコがいいんじゃないかな。よろしければ紹介しますよ」とひとこと。

 え?ジュンコさんって、まさか…。賢三さんがコシノジュンコさんと親友ということは知っていましたが、さすがに初対面で紹介していただけるとは思ってもいませんでした。目を白黒させる僕をよそに、賢三さんは「頑張ってくださいね」とやさしく微笑んでくださいました。

 帰国後実現したコシノジュンコさんのインタビュー。賢三さんが僕にしてくださったのと同様、丁重にやさしく対応していただき、たちまち心を奪われてしまったことを覚えています。