元々やっていた競技に携わるという人も、新たに別の世界へ飛び込む人も、セカンドキャリアでは身につけるべきことがたくさんあります。

 アスリートが引退し、一番の壁にぶつかるのは「ここまでやってきたからなんでもできる」という、過去の成功体験を捨てきれないことです。

 これまでの成功体験があるため、どんなこともある程度クリアできるのではないかと錯覚しがちです。

 私自身も過去の自分を捨て切るのに時間がかかりました。

 できるはずという自分と、現実の自分が乖離し、自信を失い続ける毎日を過ごしました。

「自分は何もできないんだ」と納得できたのは、選手時代の成功体験を辛抱強くズタズタにへし折ってくれた人たちがいたからでした。

 0からのスタートを受け入れてからは、すごくスムーズに仕事を習得できました。なんでもチャレンジして学び、恥をかき続けると覚悟した結果、できることが増えていきました。

 自分の現状を正確に理解することができたとき、自信が成長していったのです。

 不思議なもので、その状態になると、捨て切ったはずの成功体験が自分を後押ししてくれるようになりました。頑張り続けること、間違っていたことを受け入れて次に生かすこと、プレッシャーの受け入れ方、人が何を求めているか考えること、チームで結果を出すために自分を守ろうとしないこと。

 さまざまな成功体験が自分の成長を助けてくれました。もう一度自分をつくり直すというマインドセットが、これまでの成功体験を生かしてくれるようになるのです。