図表12の「有価証券」の欄を見ると、ゼネコンが株をたくさん持っていることがわかります。では、なぜゼネコンがこんなに株を保有しているのかと言えば、建物の建築工事などを発注する側の会社が、ゼネコンに対して株を保有することを要請してきた歴史的経緯があるからです。
しかも、それはお互いが株を保有する「持ち合い」ではなく、一方的に株を持たされる「片持ち」なのです。
一般的に、ゼネコンは「株式をたくさん持っており、持ち合いをしている会社が多い」と見られがちなのですが、これは一部間違っているということです。ゼネコンはたくさん株を持たされてはいるものの、持ってもらっていないため、安定株主比率が高くない会社も多いのです。
東京オリンピック後の業績回復で
ゼネコンが魅力的な業界に様変わり
例えば、図表12の大成建設や大林組、鹿島建設です。
つまり、ゼネコンのなかには「安定株主比率が低いけれど、有価証券をたくさん持っている」という特徴を持った会社が存在するのです。
そこに目を付けたのが、アクティビストです。以前のゼネコン業界は、業績も悪く、財務体質もよくなかったことから、アクティビストにとって魅力のある業界ではありませんでした。
ところが、東京オリンピックや都市部の再開発による工事需要の発生により、ゼネコン業界の業績が回復、財務体質も以前とは変化してよくなったことで、アクティビストに狙われるようになりました。
アクティビストは財務が改善して現預金等を多額に保有し、かつ、以前から換金可能資産である有価証券を多額に持っていたゼネコンに触手を伸ばし始めたのです。
一方、ゼネコン業界にも油断していたという側面があります。財務体質がよくないゼネコン業界はアクティビストに狙われることがなかったため、ゼネコン各社はアクティビスト対策をあまりしてきませんでした。
ところが、実は多額の有価証券を有し、財務も改善して現預金等を多額に持つようになり、アクティビストが好む会社になっていたのです。なおかつ、「片持ち」だったため、自社を守ってくれる安定株主が存在していませんでした。