ちなみに、ゼネコンは同業による敵対的買収に対しても危機意識の低い業界です。なぜなら、M&Aをしても入札機会が減ってメリットが少ない業界だから、同業他社による敵対的買収も起こりえない、と考えがちだったからです。いろんな意味で無防備だったのがゼネコン業界なのです。
実は、このような話はゼネコンに限ったことではなく、だいたいの日本の上場会社に通じることです。
ゼネコン以外の日本の上場会社は、株の持ち合いによって安定株主を確保していたから、これまでアクティビストや敵対的買収のターゲットにはなりませんでした。しかし昨今は、株の持ち合いの解消が進み、ゼネコンのように安定株主比率が低くなっている上場企業も存在するようになってきています。
そのような会社をアクティビストが狙っている。だからこそ今、ゼネコンがアクティビストのターゲットになっているとも言えるのです。
地銀の株を買い集めながら
投資家心理を巧みに揺さぶる
もうひとつ、旧村上ファンドが世間を騒がせた事例を紹介します。
この事例を見ると、アクティビストが投資家心理を見透かしていることや、アクティビストに対して過剰な期待をしてはいけないことがよくわかります。
2022年12月7日に金融専門のニュースサイト「ニッキンONLINE」が「旧村上ファンド系のシティ社、地銀5行の大株主に浮上」(注1)と題して、次のように報じました。
旧村上ファンドが地銀5行の大株主に浮上したというのです。
このマスコミ報道の後、各行の株価は急騰します。もちろん、旧村上ファンドの登場が影響して急騰したのでしょうが、旧村上ファンドに追随して地銀の株式を買った投資家はある大きな期待をした可能性があります。
(注1)旧村上ファンド系の投資会社、シティインデックスイレブンス(東京都)が複数の地方銀行で大株主となっていることが、2023年3月期の第2四半期報告書で明らかになった。判明しているのは秋田銀行、岩手銀行、武蔵野銀行、八十二銀行、スルガ銀行の5行。一方、22年3月末時点で大株主となっていた山梨中央銀行と滋賀銀行についてはシティ社の記載がなくなり、保有株式を売却したもよう。また、富山第一銀行では、著名個人投資家が大株主として急浮上。地域銀行関係者は大株主の動向に神経をとがらせている。シティ社は22年9月末時点で、秋田銀株を24万5000株(持ち株比率は1.36%、9位)、岩手銀株を34万9400株(同2.01%、9位)、武蔵野銀株を63万3000株(同1.88%、9位)、八十二銀株を977万2000株(同2.02%、10位)、スルガ銀株を308万株(同1.63%、7位)保有。いずれの銀行も、22年3月末時点では大株主として記載がなかった。