F:特許庁ではなくて、文化庁なんですね。

:特許庁は産業財産権。著作権は文化庁。ちょっとややこしいんだけど。このようにして、世界一AIフレンドリーな国を目指しています。その結果、日本は「AIが学習しやすい国」。さらには「AIの実装がしやすい国」になる。

AIと聞いて連想するのは、ターミネーター?ドラえもん?

F:「実装」とは何ですか?iPhoneとかのデバイスに、個別にAIを搭載するという意味ですか?

:この場合の実装は、つまり「AIを現実の社会や仕事の中で、実際に使えるようにする」ということです。

 例えば欧米では、AIを一気に導入しようとすると「自分の仕事がAIに奪われる」と感じる人が多く、デモが起きたり、反発が強くなったりします。でも日本は事情が違います。深刻な人手不足が現実にあるし、これからもっと加速していくのは目に見えている。だから、「AIにできることは、どんどんAIに任せよう」という空気が社会全体にあると思います。

 それに、文化的な背景も影響しています。欧米ではAIやロボットといえば“ターミネーター”のように恐ろしい存在として描かれることが多い。でも日本では“ドラえもん”のように、役に立ってくれて、親しみやすい存在として捉えられてきた。そういうメンタリティの違いが、AIの受け入れやすさ、すなわち「実装のしやすさ」につながっていると思います。

F:ターミネーターとドラえもん。同じロボットでも大違いですね(笑)。

:でしょう(笑)。だから我々は、「世界一AIフレンドリーな国」を目指してやってきたんです。これからもそれは変わりません。AIが学びやすく、使いやすく、定着しやすい環境を日本で整えていく。そうすれば、企業がアジアの中でAI拠点をどこに置こうかと考えたとき、自然と「日本がいい」と思ってもらえるはずです。地政学的にも、価値観的にも、日本は信頼される国だと思っています。

物理的なインターネットのインフラ、つまり海底ケーブルのルートを見たときに、日本はアメリカ大陸とアジアの間をつなぐハブになっている物理的なインターネットのインフラ、つまり海底ケーブルのルートを見たときに、日本はアメリカ大陸とアジアの間をつなぐハブになっている(提供:平将明氏) 拡大画像表示

F:地政学的。まさか中国に返還された香港にデータセンターを置くわけにはいかないし、台湾もキナ臭い。すぐ上に北朝鮮がある韓国など、危なくて仕方がない。

:その通り。香港も台湾も韓国も不安な要素が多すぎる。だから日本は選ばれる国なんです。で、そこで言われるのが「日本の電力供給とサイバーセキュリティは大丈夫か?」ということなんです。