日本の電力供給とサイバーセキュリティは大丈夫か?

F:そこを一番伺いたかったんです。大平記念財団のスピーチのときに、大臣がこの話題にも少し触れられて、もっと詳しく聞きたいと思ったのが今回のインタビューのきっかけです。具体的にはどのように対応しているのですか?

:まず電力についていえば、日本は「電気代が高い」という話がよく出ますが、実は問題はそれだけではありません。もっと深刻なのは、「そもそも足りるのか」という供給量の問題です。AIやクラウドが前提の社会において、データセンターの電力消費量は膨大です。だからビッグテックが海外に出るときには、「この国にサーバーを置いて本当に安定して電気が得られるのか?」という視点で見ています。

F:非常に言いにくいことですが、いま止まっている原発を再稼働させれば、簡単に解決しますよね。

:もちろん原発の再稼働という選択肢もあります。でも原発は単純にスイッチを押せば動くというものじゃないんです。まず地元との合意形成が必要だし、規制への手続きもある。安全対策の検証も必要です。だから我々としては、再稼働に頼るだけではなく、もっと広い視野での対応が必要だと考えています。そこで今進めているのが「ワット・ビット連携」です。ワットは電力、ビットはデータ。つまり、発電所・送電インフラ・データセンターを一体として捉え、国がトータルで支援する仕組みです。特定地域に最適な場所をつくっていく。エネルギーとデジタル基盤を結びつけることで、企業が安心して進出できる環境を整備する。これがまず一つの柱です。

 もう一つの懸念が、サイバーセキュリティ。これについては、私が担当した「サイバー対処能力強化法」という法律を軸に、政府の体制を強化しています。具体的には、「国家サイバーセキュリティ統括室(NCO)」や「内閣サイバー官」という専門人材を中心に、縦割りを越えた横断的な対処能力を構築しています。それに加えて、アメリカなど同盟国との連携も進めていて、国際的なサイバー防衛ネットワークの一翼を担う立場にあります。

 つまり、日本にとって重要なのは、「安く電気が使える」でも「最新の技術がある」でもなく、「社会全体として安心して預けられる場所かどうか」。AIやデータセンターを受け入れる国としての信頼性、これは今後の国家競争力の核心になると思っています。