確かにXC90なら、ライフシーンの変化に柔軟に対応できる懐の深さと、世界トップレベルの安全性を備えている。しかもメルセデス・ベンツやBMWなどのライバルと比較して、自己主張が適度な点もプラスに作用している気がする。

10年後胸を張って乗れるに違いない
魅力的な大型SUV

 走りはウルトラスムーズ。しかもサイズを感じさせない。絶好の視界により車両感覚が把握しやすいのはもちろん、緻密なパワーコントロールによりドライバーの意思に忠実なドライバビリティを実現しているからだ。

 HVモードをセレクトすると、バッテリー残量がある限り、通常はEVとして走り、静粛でジェントルな印象をキープ。アクセルに軽く力を込めるだけで交通の流れをリードできる。車重は2300kgとヘビー級だが、重さを意識するシーンはない。

 オープンロードで右足をワイドオープンにすると、PHEVのもうひとつの個性が味わえる。スポーティさだ。モーターとともに最高出力317psのエンジンがスクラムを組んだ加速は強力。0→100km/h加速タイム5.3秒の速さが体感できる。ドライバーズカーとしても一級品である。

 足回りはエアサス仕様。路面状況に応じて減衰力が変化する電子制御ダンピング機能を組み込んでいる。乗り心地は良好。試乗車は細かなピッチングがやや目立ったが、この傾向は走行距離が伸びると落ち着くと聞いた。

 ボルボの魅力は、ロングライフ設計にある。使い込むほどにユーザーになじみ、家族のパートナーとして輝く。最新のXC90はそのよき伝統を継承している。環境に優しいこのPHEVモデルなら、10年後にBEV全盛の時代が訪れても、胸を張って乗れるに違いない。魅力的な大型SUVだ。

(CAR and DRIVER編集部 報告/横田宏近 写真/横田康志朗)

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