放出があると報じられた冬の移籍期間を終えても遠藤はリバプールでプレーし、5シーズンぶりの優勝を決めた4月下旬のトッテナム・ホットスパー戦でも後半31分から途中出場。ボランチでもセンターバックでもなく右サイドバックとして、試合を締めるクローザーの役割をまっとうした。

 前出の記事の真偽はわからない。それでも、シーズンを通じてプロフェッショナリズムを貫き通し、チームの勝利を追い求めた遠藤の立ち居振る舞いが、スロット監督を魅了したのは確かだろう。

自分の役割を理解し
最大限の力を発揮する選手

 リバプールが来日し、日産スタジアムで横浜F・マリノスと対戦した7月30日のJリーグワールドチャレンジ。後半30分からセンターバックで途中出場させた遠藤の左腕に、キャプテンマークを託した理由を問われたスロット監督の答えを、同じくリバプールの公式ホームページが伝えている。

「昨シーズンのリーグ優勝に対する貢献度を考えれば、ワタルは誰よりもそれ(キャプテン)に値すると私は思っている。ゴールを多く決めた選手たちが注目されているが、他に重要な選手がいるのを忘れていないだろうか。いつもは先発しない選手たちが、それぞれの役割をどれだけ受け入れてくれたか。たとえ1分間の出場だとしても、ワタルはチームのためにピッチ上で戦い続けてくれた」

 スロット監督の言葉は長丁場のシーズンを戦い抜くうえで、遠藤の背中がリバプールの羅針盤になったと物語る。同時にプロ意識を高くもつ選手たちがいるチームは、その分だけ強いとも示唆している。

 選手を社員に、チームを組織に置き換えても意味は十分に通じるだろう。熱狂的なリバプールのサポーターから加入当初に注がれた懐疑的な視線を、フォア・ザ・チームの頼れるヒーローへの大声援に変えた遠藤の3シーズン目のプレミアリーグは、15日(日本時間16日)のボーンマス戦から幕を開ける。