佐野海舟の日本代表復帰に賛否両論、森保監督の思いを胸に目指すべき“ゴール”とはワールドカップ(W杯)アジア最終予選・日本-インドネシア。前半、プレーする佐野海舟 Photo:JIJI

一人の選手を巡って、サッカーの日本代表が大きく揺れた。不同意性交容疑で昨年7月に逮捕され、同8月に不起訴処分になった後は招集されていなかった佐野海舟が先の6月シリーズで復帰すると、SNS上を中心に賛否両論が沸きあがった。昨夏から活躍の舞台を移したドイツの地で、突出した数字を次々とマーク。来年夏にアメリカ、カナダ、メキシコで共催される次回ワールドカップでも戦力として期待される、24歳のボランチを巡る是非をあらためて考えてみた。(ノンフィクションライター 藤江直人)

不同意性交容疑で逮捕
釈放後に渡独しマインツに合流

 サッカー界を揺るがす前代未聞の不祥事が起こってから1年がたった。日本代表の新進気鋭のボランチとして将来を期待され、J1の名門・鹿島アントラーズから独ブンデスリーガ1部のマインツへ移籍したばかりの佐野海舟が、不同意性交容疑で警視庁本富士署に逮捕されたのが昨年7月14日だった。

 事件がメディアで一斉に報じられたのが書類送検後の同17日。都内のホテルで30代女性へ性的暴行を加えたとして、同じく逮捕された20代の知人男性2人とともに勾留されていた佐野は同29日に釈放された。その際には、所属するマネジメント事務所を通じてこんなコメントを発表している。

「このたびは私の行動によって、被害者の方に多大なご迷惑をかけてしまったことを心よりおわび申し上げます。自分の行動の結果を真摯に受け止め、何をすべきか、一歩一歩前進し、信頼回復に努めていこうと考えております」

 謝罪と反省の意を示した直後に佐野は渡独し、8月1日にマインツへ合流した。そして、東京地検は同8日に、佐野を含めた3人を不起訴処分としたと発表した。理由は明らかにされていない。

 しかし、早々に公式戦に出場し、デビューを果たした佐野は諸手を挙げて歓迎されたわけではなかった。マインツのファンサイトには、佐野の加入に公然と異を唱える記事が掲載されている。