孫正義や柳井正には絶対なれない…会社の業績を伸ばせない「ダメ経営者」に共通する“決定的要素”とは?Tomohiro Ohsumi/gettyimages

京都先端科学大学教授/一橋ビジネススクール客員教授の名和高司氏が、このたび『シン日本流経営』(ダイヤモンド社)を上梓した。日本企業が自社の強みを「再編集」し、22世紀まで必要とされる企業に「進化」する方法を説いた渾身の書である。本連載では、その内容を一部抜粋・編集してお届けする。今回のテーマは「レジェンド経営者とダメ経営者の差」。孫正義氏や柳井正氏が当たり前に持っているのに、“残念な日本企業”の経営トップに欠落している決定的要素とは?

爆発的成長を遂げる企業に
共通する要素とは?

 デジタルの世界では、「指数関数的成長」が常識となっている。プラットフォーム型のビジネスは、その典型である。利用者が増えれば増えるほど、個々の利用者の利便性が増す一方で、顧客獲得コストやサービス提供コストは下がる。経済学で「ネットワーク外部性」と呼ばれる現象である。

 より広くは、無形資産そのものが指数関数的に成長する。たとえば組織資産、人的資産、顧客資産は、いずれも「共有資産」化されることで、より価値が増す。これは、ある用途に活用されると占有化されてしまう、建物や機械設備、金融資産などの有形資産との本質的な違いである。言い換えれば、有形資産から無形資産へと経営の基軸をシフトすることで、指数関数的な成長が可能になる。

孫正義や柳井正には絶対なれない…会社の業績を伸ばせない「ダメ経営者」に共通する“決定的要素”とは?PHOTO (C) MOTOKAZU SATO
京都先端科学大学 教授|一橋ビジネススクール 客員教授
名和高司 氏

東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクール修士(ベーカー・スカラー授与)。三菱商事を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてディレクターとして約20年間、コンサルティングに従事。2010年より一橋ビジネススクール客員教授、2021年より京都先端科学大学教授。ファーストリテイリング、味の素、デンソー、SOMPOホールディングスなどの社外取締役、および朝日新聞社の社外監査役を歴任。企業および経営者のシニアアドバイザーも務める。 2025年2月に『シン日本流経営』(ダイヤモンド社)を上梓した。

 そのような桁外れの成長を遂げる企業を、「エグゾス(ExOs)」と呼ぶ。指数関数的組織(Exponential Organizations)の略。新種の怪獣のような名前だ。邦画の主人公「シン・ゴジラ」は、放射能を浴びて巨大化した。エグゾスは、デジタルパワーを満身に浴びて巨大化していくのである。

 シリコンバレーに拠点を置くシンギュラリティ大学では、エグゾスの法則を教えている。使われる教科書は、その名も『Exponential Organizations』、邦題は『シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法』(日経BP)である。

 まず、「MTP」を高く掲げることが大前提となる。MTPはシリコンバレーでは呪文のように唱えられるキーワードだ。Massive Transformative Purpose(巨大で変革的なパーパス)の略である。「北極星」と呼ぶこともある。そもそも、このような奇想天外なパーパスがなければ、桁違いの成長を目指す資格はない。