日本のレジェンド経営者の
共通点とは?

 しかし、その同じ30年間に、指数関数的な成長を遂げてきた日本企業が一握りだが存在することも見落としてはならない。そのような「例外」企業としては、ファーストリテイリングとソフトバンクの2社が、真っ先に挙げられる。

 前者はアパレル製造小売り企業、後者は通信メディア企業と、業種は明らかにバラバラ。進化のパターンも、筆者が『超進化経営』(日経BP)で示した類型に従えば、ファーストリテイリングは「深耕(カルト)」型、ソフトバンクは「脱構築(デコン)」型と異なる。一方で、重要な共通点をくくり出すことができる。

 第一に、創業者みずからがスケール化を力強く牽引してきたこと。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長、ソフトバンクの孫正義会長兼社長は、いずれも日本を代表するカリスマ創業者である。当然ながら、2人とも創業当時はスタートアップ創業者の一人にすぎなかった。しかし、他の泡沫スタートアップとの決定的な違いは、0→1に留まらず、それを1→100にスケールアップし続けてきたことにある。

 第二に、前述したMTPを、高らかに掲げていること。創業当時から1兆円を目指す、世界一になる、といった身の丈以上の目標を公言。「ホラ吹き」と揶揄されても、まったく意に介さない。2社とも売上高1兆円を約束通り達成するや、すかさず次の目標を10兆円へと1桁高く掲げ直した。

 第三に、前述のエグゾス10法則をいずれも実装していること。なかんずく光っているのが、 (8)のアルゴリズム、すなわち独自の価値創造方程式だ。

 ただし、この価値創造方程式にも3つの共通点があることを指摘しておこう。それは、「自社ならでは」のひねりがあり、自社の中で再現性と拡張性があり、かつ常にアップグレードし続ける、という3点である。この3つこそ、圧倒的にスケールし続けるための成功条件と呼ぶことができそうだ。

 ほかにも、このようにしっかり指数関数的な成長を実現した日本企業は存在する。たとえばリクルート、キーエンス、ダイキン工業なども、先に挙げた成功要件が見事に共通する超成長企業である。裏を返すと、そのほかの多くの残念な日本企業は次の3点のいずれか、あるいはすべてにおいて、大きく劣後していたといえそうだ。