また、昔から「精神科に行くと薬漬けにされる」なんてうわさもあります。
昔は、たしかに依存性の高い薬が多く処方されていた時代もありました。が、今は依存性の低い薬もたくさん開発され、また、依存性のある薬に関しては、乱用を防ぐために一度に処方できる日数の制限がされていたり、多くの種類の薬を同時に処方させない方向に国も舵を切っています。
昔とは状況が大きく変わってきていることを知ってほしいと思います。
もし薬について不安があるなら、医師に正直に相談してみましょう。なぜ薬が怖いのかを伝えて、依存性の有無、どう使えばいいのかなどを聞いてみると安心して服用できますし、医師側も処方を見直すきっかけになるかもしれません。
発達障害やADHDと
安直には決められない
近年、「大人の発達障害」や「グレーゾーン」「ADHD」などの言葉をよく見聞きするようになりました。
「あの人はちょっと変わってるから発達障害かも」
「つき合いにくいけど、グレーだからしょうがないよね」
「ADHDだから怒りがコントロールできないんだね」
悪気なく、そんな会話をしたことがある人もいるかもしれません。
「発達障害」などの言葉が社会に浸透したことによって精神科の病気に関して興味をもつ人が増えた半面、病名がライトな感覚で扱われるようになりました。
ADHD(注意欠如多動症)は不注意や多動、衝動性が大きな特徴とされる疾患。衝動性は、たしかに怒りのコントロールに影響する面があります。
ただ、怒りのコントロールがききづらいからADHDだとは限らないわけで、「この人は怒りのコントロールがきいていないからグレーゾーンなんじゃないか」などと思っているとしたら、それはすごく安直な発想だといわざるをえません。
そもそも「グレーゾーン」という言葉。本来は、知能指数(IQ)が平均を下回るものの知的障害と診断されるラインではなく、適切な支援が受けられず生活に困難をきたしうる、いわゆる境界知能とされるゾーンの人たちをすくい上げるための言葉であったように思います(なお現在の診断基準では知的発達症はIQだけで判断されるわけではありません)。