パレスチナが分裂しても
黙認した国際社会

 選挙の結果を受けて、ハマスとファタハはともに協力して政府をつくる話し合いを始めた。けれど、イスラエルと欧米はハマスを認めなかった。

 欧米はパレスチナに選挙を求めてきたのに、選挙をしてハマスが勝ったら「ハマスの政権への参加は認められない」として、パレスチナへの支援を止めた。

『もしも君の町がガザだったら』書影 『もしも君の町がガザだったら』(高橋真樹 ポプラ社)

 とくにアメリカは、武器を送るなどファタハを支援して、ハマスと戦うよう仕向けた。アメリカとしては、イスラエルを攻撃するかもしれないハマスが政権をにぎることは認められなかった。それにより、ハマスとファタハははげしくぶつかった。

 2007年には、ヨルダン川西岸地区をファタハが、ガザ地区をハマスが支配する形で、パレスチナ自治政府は分裂した。パレスチナの勢力どうしが争うようになったことは、パレスチナの住民にとっては悲劇でしかなかった。

 それは、イスラエルにとっては好都合だった。国際社会から和平交渉を求められても、「パレスチナが分裂しているから交渉できない」と言い訳ができた。そしてイスラエルは、ハマスが支配するガザを軍事封鎖した。

 ガザの封鎖は集団懲罰で、国際法では認められない。しかしアメリカは封鎖を支持、ガザと国境を接するエジプトも封鎖に協力した。ヨーロッパや日本など、世界の国々も封鎖を黙認した。ガザの人々を苦しめているのは、イスラエルだけではない。