「デザイン経営」を、経営者にとっての切実な経営課題に

「デザイン経営」は新しいステージに。デザイナーは役割の拡張よりも「とがった」造形で世界を目指してほしいNORIHIKO SAEKI
2000年東京大学法学部卒業、01年東京大学大学院中退、経済産業省入省。17年海外需要開拓支援機構経営企画部長としてクールジャパン分野の投資を統括。19年JETROロサンゼルス事務所次長として、ハリウッドの窓口として、コンテンツ、ファッション、デザインなどを担当。24年文化創造産業課長兼アートファッション政策室長兼デザイン政策室長として、「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」をとりまとめ。25年中小企業庁企画課長。

――経済産業省としてはこれからのデザイナーに何を求めますか。

「『デザイン経営』宣言」とは矛盾するかもしれませんが、まずはデザイナーの方々に、世界のいいものをたくさん見て感性を磨き、造形のクリエイティビティを高めていただきたい。感性なり、経験なり、知恵なりを熟成させて唯一無二の意匠に昇華させてほしい。

 デザイナーは経営を担うより、造形を極めてもらった方が競争力に直結するのではないでしょうか。それを経営にどう生かすかは経営者の責任です。そして、経営側には、統一的な造形やデザインを複数の製品・サービスに適用して、消費者により分かりやすく訴求力のある形、「IP」となる商材を出していただきたい。このままでは日本から「とんがった意匠性としてのデザイン」がどんどん失われてしまうのではないかと危惧しています。

――経産省としてはこれからどのように「デザイン経営」を推進しますか。

 デザインを活用すれば収益を出せる、ということを共通認識にすることがとても大事です。「勝利の方程式」を明らかにすることですね。経営者がデザイナーをどう使えば製品やサービスが売れ、業績が上がるのか。現状では、このイメージをお示しできていません。

「モノづくり」と「コトづくり」はコインの表裏です。どちらもデザインの重要な構成要素ですが、ユーザーに直接訴求できるのは前者、つまり造形としてのモノづくりではないでしょうか。これからは経営者側にも積極的にアプローチして、成功事例を共に議論しながら、経営課題として語っていかなければいけないと考えています。