小さな目標達成をかみしめてもらう
希望をもつことができる資質は大切な心理的資本のひとつですが、この資質はトレーニングによって鍛えることが可能だと考えられています。変化の激しい時代において、自分の成長を実感しつつ、自分の将来に希望をもちながら仕事を進めていくには、いくつかの工夫が必要になります。ここでは2つのアクションを紹介しましょう。
変化の激しい時代になって、長期的な目標を設定することが難しくなっています。そんなときには小さな目標を設定し、それを達成することで自信をつけることが最善策になります。
心理学者のロックとラーサムによる研究によれば、小さな目標の達成が次の目標に向かう大きなモチベーションになることが示されています[1]。これにより、将来の大きな目標に向けてのステップとして、日々の努力を続けることがいかに有意義であるかがわかります。
たとえば、キリスト教では定期的に礼拝に出席する人が感じる幸福感は、時とともに蓄積されていくことが知られています。そして、礼拝に出る頻度が多くなればなるほど、幸福感も大きくなるそうです。
このことは、定期的に行う運動やヨガについても同様です。ほんの小さな成長ステップでも、日々積み重ねていくことが大切なのです。
また、日々のステップの積み重ねをカレンダーや日記などに書き留めてがんばりを可視化すると、自分の成長をより強く実感できるようになります。
チームリーダーとしては、メンバーの小さな目標設定を支援するために定期的にメンバーと対話を行い、メンバーの目標を具体化することに注力しましょう。
たとえば、「日報を15分以内で書く」とか、「終業時にはデスクの上を片づける」といった小さな目標でもいいのです。そして、メンバーがその小さな目標を達成した際には、きちんと承認してフィードバックすることが大切です。
成長の実感を促すための同僚やメンターからのフィードバック
リーダーからの定期的なフィードバックは、メンバーが自分の成長を感じるために不可欠です。フィードバックがモチベーションを高め、パフォーマンスの向上につながるとの研究結果もあります[2]。
また、リーダーや同僚からのフィードバックによって、メンバーは自身の成果や改善点を明確にすることができます。周りに頼れるメンターやロールモデルがいることで、自分自身のキャリアパスや将来像についてのヒントを得ることもできます。
研究によれば、メンタリング関連の取り組みはキャリアの成功や満足度の向上に寄与することが示されています[3]。これらの結果からも、リーダーであるみなさんは、メンバーにフィードバックを行うことが必須と考えられます。
一方で、みなさんにフィードバックをくれる上司やメンターも必要です。
社内で見つけることが難しければ、社外に目を向けてもよいかもしれません。最近では、フィードバックを通して自分の成長を促進するために、パーソナルコーチを付けるビジネスパーソンも増えてきました。
フィードバックでは、本人の伸びしろを伝えるようにする
このアクションを行っていくうえで、いくつか注意すべきポイントがあります。
まずは、メンバーが「小さな目標設定」をコツコツと続けているあいだ、達成できたことに注目してほめ、本人に成長をかみしめてもらうようにすることです。
人間ですから、たまにはサボってしまったり、仕事が忙しくて目標を達成できない日もあるでしょう。そんなときにも、日々できているところに注目してメンバーをほめてあげましょう。
次に、メンバーにフィードバックをする際は、フィードバックが当人への批判ととられるような伝え方をしないことが大切です。
メンバーが「自分の伸びしろを示してくれているのだな」と受け止められるようなフィードバックの仕方を工夫してください。
*この記事は、『職場を上手にモチベートする科学的方法――無理なくやる気を引き出せる26のスキル』(ダイヤモンド社刊)を再編集したものです。
[2] Kluger, A. N., & DeNisi, A. (1996). The effects of feedback interventions on performance: A historical review, a meta-analysis, and a preliminary feedback intervention theory. Psychological Bulletin, 119(2), 254-284.
[3] Allen, T. D., Eby, L. T., Poteet, M. L., Lentz, E., & Lima, L. (2004). Career Benefits Associated With Mentoring for Proteges: A Meta-Analysis. Journal of Applied Psychology, 89(1), 127-136.