そのうえで、どちらのグループにも「酢を含むあまりおいしくない健康飲料を飲む」「地震で被災した子どもの映像を視聴し、寄付を検討する」「健康的だが魅力に欠ける食事を選ぶ」など、短期的には心に痛みを感じるものの、健康や社会貢献など長期的な利益につながる課題にどう向き合うかを観察しました。
すると、ペンをしっかり握っていたグループのほうが、「長期的な利益を優先してやる」と答える人が多かったのです。
理由としては、筋肉を緊張させることで、体を「やるぞ」というモードに切り替えるホルモン(アドレナリンなど)の分泌が高まり、脳が「今は頑張るときだ」と判断するからではないかと考えられています。
つまり、体の動きは、心のあり方にも影響を与えるということ。
決意や意思が揺らいだときこそ
体を動かして気持ちを立て直す
このように、体の感覚が気持ちや行動に影響することを、心理学では「身体化された認知(embodied cognition)」と呼びます。

だから、やる気が出ないときや、あとひと踏ん張りしたいとき、気の進まないことをやるときは、まずぎゅっとこぶしを握ってみるのがよいのです。それだけで、気持ちが切り替わり、前に進む力がわいてくるはずです。
「自分で決めたことすら、最後までやり通せない」
「意志が弱くて、周囲に流されてしまう」
そんなふうに自分を責める必要はありません。状況や条件が変われば、決意や意志が揺らぐこともあって当然です。
だからこそ、「ちょっとした動き」で心を立て直す工夫が役に立つのです。
自分をしっかり持ちたいときは、力を入れてぎゅっとこぶしを握る。やる気が起きないときこそ、ガッツポーズ!きっと闘志がメラメラわいてきます。