その名前を覚え、親しみを込めて呼ぶことは、「あなたに関心があります」「あなたは私にとって大切な人です」というメッセージを届けることでもあります。

 反対に、名前を間違えたり、「あのー」「すみません」といった曖昧な言葉で済ませたりすることは、「あなたには興味がない」「あなたは私にとって覚えるほどの存在ではない」というメッセージを送ることにほかならないのです。

名前を呼ぶ機会は
自分でつくること!

 しかし、とくにビジネスの場においては、私たちはたくさんの人と出会い、その関わり方にも濃淡があります。毎日のように顔を合わせる相手もいれば、数年に一度しか会わない人もいるでしょう。

 何度も顔を合わせる関係であれば、名前を覚えることはわけもないことです。しかし、滅多に会わない相手の名前を覚え、また相手に覚えてもらうためには、ちょっとした工夫が必要です。

 私が「名前を覚え、覚えてもらうスキル」を身につけたのは、東京生まれ東京育ちから一転、大阪に本社がある大広(編集部注/広告代理店)で新人時代を過ごした経験によるものだと思います。

 配属されたのは、官公庁を担当する部署。社内では戦略的ポジションとされており、コンペ案件があるたびに、クリエイティブ、マーケティング、セールスプロモーションなどの各部署のエース社員が招集され、プロジェクトチームが組まれていました。私の部署は、その調整、取りまとめ役も担っていたのです。

 当然、メンバーはそれぞれ本業を抱えており、日程の調整ひとつとってもひと苦労でした。当時は、まだインターネットもメールも普及していない時代、1980年代後半の話です。日程調整は、1人ひとりに電話や対面でスケジュールを聞き、決まった日程はメモに書いて各自のデスクへ配って回る。そんなアナログな日々でした。

 けれど、その“ひと手間”が、思わぬ副産物を生んでくれました。連絡のたびに相手と顔を合わせて話す時間があるので、他部署のほかの先輩たちにも自然と顔と名前を覚えてもらえたのです。