数字は見ているのに
行動が変わらない理由
多くの企業では「データの見える化」をある程度達成し、数字が定期的に共有されているはずです。しかし、プロダクトや現場の行動が変わらないのはなぜでしょうか。この背景には、「数字を見ること」と「行動を変えること」が切り離されてしまっている構造があります。特に象徴的なのが、ダッシュボードの使われ方です。
ダッシュボードとは、もともとクルマの運転席にある計器盤のことを指し、クルマの状態を運転者にリアルタイムで知らせるためのものです。ビジネスにおけるダッシュボードも同様に、KPIや各種データを視覚化し、事業やプロダクトが今どういう状態かを即座に把握するためのものです。
その裏側にはBIツールが存在し、社内外のデータを収集・統合・加工して、ダッシュボードに反映します。ウェブ系企業などでは、オフィス内の誰の目にも入る場所に大型ディスプレイを設置し、そこにリアルタイムで更新されるKPIを常時表示しているケースもあります。それにより、チーム全体が常にプロダクトの現在地を共有し、意識を揃えることができます。
しかし、いくらダッシュボードに数字が表示されていても、数値に応じた動きをとれなければ意味がありません。クルマに例えれば、メーターを見てスピードの出し過ぎに気づいていても、ブレーキを踏まなければ減速しないのと同じで、むしろ見ているのに何もしないことで、事故のリスクが高まっている状態です。
ビジネスにおいても同じです。数字を見ていることに満足し、行動を変えない状態は、プロダクトの進化を止めてしまいます。例えば、KPIが前月比でわずかに改善していたとしても、「なぜ改善したのか」「再現性はあるのか」といった問いが立てられなければ、次の一手にはつながりません。