にもかかわらず、多くの企業の定例会議やレポート資料で、数字の上下を確認するだけで終わってしまう場面が繰り返されています。このような運用では、KPIは意味ある指標にはなりません。

 数字を見ることと、そこから学び、動きを変えることとの間には、大きなギャップがあります。まずはその事実を直視することが、KPIを真に生かす第一歩です。

KPIは「答え」ではなく
「問い」を立て直すきっかけ

 KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)という言葉の意味から、「目標達成度を測る数値」という印象を持つ人は多いでしょう。実際、期初にKPIを設定し、目標値に届いたかどうかで業績を評価する運用は一般的です。しかし、KPIを単に「成果の証拠」としてだけ扱ってしまうと、成績表の上の動かない数字という以上の意味がなくなってしまいます。

 繰り返しますが、本来、KPIは「問いを生むきっかけ」であるべきです。KPIは、ある仮説や戦略に基づいて「この数値がこう動けば成功に近づくはずだ」と設計されたものです。つまり、仮説の進捗を観測するインジケーターであり、変化があればその意味を読み解く起点となります。数字の上下よりも「なぜ変化したのか」「何が起きているのか」という問いを立てることが重要です。

 問いを立てるためには、点ではなく線で数字を見る視点が欠かせません。「今月のKPIが100だった」といった現在の値(点)だけではなく、「先月80だったものが100になった」「3カ月前からじわじわ下がっていたものが一時的に戻っただけだ」といった変化の流れ(線)を見ることで、初めてその意味が浮かび上がってきます。