「(亡くなった女子高生のTwitterにあがっていた画像にもある市販薬の)鎮咳薬Aによる高揚、興奮、もしかすると現実感喪失や幻覚が、アルコールの作用によって強まり、死に対する恐怖感がなくなり、あのような行動を促したと思われます」
こう話すのは、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・薬物依存研究部部長(精神科)の松本俊彦医師。Twitterを読むと、2人には以前から希死念慮があり、市販薬の過量摂取をしていた形跡がある。
なぜ市販薬の依存が
増加しているのか?
若者の間では、薬物依存の中で、市販薬の占める割合が近年増加傾向にある。
前出の松本医師が中心となり、国の精神科医療施設で調査を行った(注1)。この調査は1987年以来、ほぼ隔年で実施されているもので、同じ方法で実施している。
22年度の調査は1531の対象施設のうち、1143施設の協力を得た。このうち、患者から同意を得られた2468症例を分析した。
それによると、市販薬の依存は10、20代の割合が多く、違法薬物経験者は少ない。特に10代の薬物乱用で、市販薬が多用されていることを明らかにした。覚醒剤や大麻、コカイン、ヘロイン、MDMAなどの違法薬物の割合が多い30、40代とは傾向が異なる。しかも、女性の割合が多い。
2014年の調査では、10代の市販薬依存の割合は0%だった。それが16年の調査では25%に増加した。
18年の調査では41.2%となり、20年の調査では56.4%と半数を超えた。そして22年の調査では65.2%と、7割に迫る勢いだ。それだけ市販薬に依存する傾向が強まっている。街中で入手できるほか、インターネット経由で手に入れる若者たちが多くなっている。
注1「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」(研究分担者 松本俊彦 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部 部長)『薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究』(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 研究代表者 嶋根卓也)2023年3月31日。