非行歴のない女子高生が
「市販薬OD」に走る理由
もちろん、トー横という限られた場所だけで市販薬のODが問題になっているわけではない。
21年12月、滋賀県守山市で、通信制に通う京都市内の女子高生がODで死亡した。使われた薬は、病院で処方される睡眠薬や抗不安薬、市販されている咳止め薬など。SNSで知り合った2人とODをするために集まっていた、という。

「10代の薬物依存で問題になっているのは覚醒剤でも大麻でも、脱法ハーブでもありません。ドラッグストアで簡単に買える市販薬の乱用は、コロナ禍でさらに増えています。
これまでの調査では、脱法ハーブ乱用の当事者は男の子が多く、高校中退で、ほかにも非行歴があったんです。いわば逸脱行動とセットでした。しかし、市販薬の乱用の場合、女の子が多いんです。しかも高校在学中か、高校を卒業しています。ほかの非行歴はありません。彼女たちは生きづらさを緩和するためにODをしているのです」(松本医師)
どのくらいの高校生が市販薬を乱用しているのか。「過去1年以内」の経験を見ると、高校生全体の1.57%、約60人に1人の割合で市販薬乱用をしている(注2)。
男女別では、男性が1.2%なのに対し、女性が1.7%で、女性比率が高い。学年別では、1年生が1.4%、2年生が1.6%、3年生が1.8%。学年が上がるにつれて、経験者が増える。
コロナ禍も手伝ってか、違法薬物の経験率は下がったが、市販薬乱用経験率が増えた、ということになる。
注2「薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021」(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 研究代表者 嶋根卓也)2022年12月31日