
SNSには毎日のように怒りの言葉が飛び交い、炎上が起きている。そんないつも怒ってばかりの人は、リアルではどんな生活を送っているのか?あるカウンセリングの事例をもとに、裏側に潜む心の動きを読み解く。※本稿は、杉原保史『プロカウンセラーの賢く怒る技術』(創元社)の一部を抜粋・編集したものです。
SNSには怒りが渦巻き
炎上と誹謗中傷が絶えない
21世紀に入って、社会にSNSが浸透したことで、私たちのコミュニケーションは大きく変わりました。現代社会におけるコミュニケーションを考える上で、SNSは避けて通れない話題です。
とりわけ、怒りについて考えるときにはそうでしょう。SNS上には怒りが溢れています。怒りに駆られた多くの匿名の個人が、有名人などをターゲットとして心無い言葉によって攻撃し、攻撃された当人が自殺にまで追い込まれるという事件がいくつもありました。
有名人に限らず、仲間内でのネットいじめで自殺に追い込まれた事件もいくつも見られます。SNS上の誹謗中傷やネットいじめは、現代における重要な社会問題なのです。
怒りは強い者から弱い者へと権力勾配に沿って表現されやすいものです。多数派であることは「強さ」ですから、怒りは多数派から少数派へと表現されやすくなります。また、匿名であることも報復の恐れを低下させ、怒りを表現させやすくするでしょう。
文字によるコミュニケーションには
「怒りの表現」への抑制を解く面も
ネットやSNS上の文字による攻撃は、相手の傷つく反応が見えないので、攻撃へのハードルを下げます。「アイヒマン実験」とも呼ばれる有名なミルグラムの服従実験は、そのことを明らかにしています。