知財とデザインが一体になって
競争優位を生み出すスタイル
勝沼 デザインチームとIP(知的財産管理)チームが密に連携を取っているとお聞きしました。
鈴木 知財チームとマーケティング本部の各チームは、合計で年100回以上ミーティングしています。差別化できる商品を世に出していくには、知財チームの観点が欠かせません。
特にカミソリなどの商品の場合、ほとんど「特許合戦」と言っていい。刃のちょっとした角度や構造が特許の対象になっているケースも少なくなく、新しいアイデアを企画して進めても、その意匠や機能の特許を他社が既に保有していると分かった時点で、開発はストップしてしまいます。

多摩美術大学卒業。NECデザイン、ソニー、自身のクリエイティブスタジオにてプロダクトデザインを中心に、コミュニケーション、ブランディングなど、幅広くデザイン活動を行う。国内外デザイン賞受賞多数。デザイン賞審査員も務める。2020年 NEC入社、デザイン本部長として全社デザイン統括を行う。2022年度よりコーポレートエグゼクティブとして、経営企画部門に位置付けられた全社のデザイン、ブランド、コミュニケーション機能を統括。2023年より現職。
Photo by YUMIKO ASAKURA
勝沼 デザイナーが「このデザインは新しい」と考えても、他社の特許に抵触するものなら、商品化はできないわけですからね。
鈴木 逆に、僕たちが企画する商品に自社の特許技術を積極的に組み込めば、それ自体が競争優位の源泉になります。さらに、開発したデザインや機能が「特許性が高い」と判断された場合、たとえすぐに商品化できなくても特許を取得しておくことで、将来的に商品化するための貴重なアセットとなります。
だから新しいアイデアが出たら即プロトタイプ化し、その段階で知財性を確認する。ある意味、「守られた状態」で市場テストに持ち込めるのは大きな武器です。
勝沼 「デザイン×IP」が、守りにも攻めにも役立つということですね。
鈴木 そうです。デザインチームにとって知財チームは、とても頼りになる存在といっていいと思います。