高校野球では1974年から金属バットが用いられているが、これはもともと経済的理由から導入されたものだった。それまで高校野球では木製バットが用いられていたが、硬式球という石のように硬いボールを打つとすぐに折れたりひびが入ったりして使えなくなり、費用がかさむ。そこで高野連は、木製ほど簡単に破損しない金属バットを導入することを決定した。

 ところが時代を経るにつれ、野球用具メーカーが技術革新で「飛ぶバット」を開発・販売するようになったことから打球が速くなりすぎ、投手や内野手などの怪我の危険性が高まった。そこで2001年からはバットの最大直径を67ミリと細くし、重さを900グラム以上とする規定が盛り込まれた。バットを重くすればスイングスピードが鈍くなり、危険性が抑えられると考えられたのである。

 ところがその後、日本の野球用具メーカーは(これは良くも悪くもだが)さらなる技術革新を行い、900グラムの重いバットでも振り抜きやすく、打球が飛ぶバットを開発していった。そうして再び怪我の危険性が高まったのである。

「重いバット」が助長させる
体への負荷と学校格差

 そこで2021年より高野連は金属バットの基準を再設定し、バットの最大直径をさらに細くして64ミリ未満とし、新たに反発性能規定も盛り込んだ。新基準適用後の甲子園野球では、ホームランが激減したことで大味な試合が少なくなり、積極的な走塁や小技などを用いる「スモールベースボール」の伝統が復活したとも評されている。

 ここで問題なのは、「900グラム以上」という重量規定がいまだ残っていることである。実は900グラムのバットは大変重いものであり、現代プロ野球ですら900グラム以上のバットを使用している選手は多くない(主流は850~880グラム程度)。また、大人の男性が多い成人の軟式野球では700グラム台が一般的である。成人男性の腕力を基準にしても「900グラム以上」は明らかに重い。

 この規定が高校野球に何をもたらしたかというと、ウェイトトレーニングと「食トレ」のブーム化、高校球児の体格の巨大化である。