ウェイトトレーニングをするには学校に機材を揃えるか、高校生自身がお金を払って公営ジムなどに通うかしなければならない。また筋肉を追い込んだあとに超回復させるにはプロテインが必要で、購入代金がかかる。
さらに栄養摂取の重要性が改めて認識されたが、それが過激化して大量の食物を無理にでも摂取する「食トレ」がブームとなった。まだ成長期の高校生が筋力増強に熱心になり、体を急速に大きくするために過食を行うことは、筋トレで鍛えられる骨格筋にとどまらず胃腸に負担をかけてしまう。
バットの重さを変えない
高校野球を愛する大人たち
それでもなお「900グラム以上」という規定が堅持されているのは、高野連や「高校野球を愛する」大人たちが、甲子園に出場するようなトップオブトップの選手・チームのことだけを考えているからである。

「頂上」の者たちであれば、高校生にはあまりに過剰な900グラム以上というバット規定に合わせて体を巨大化させる環境を持っており、平均体重は70キロ以上であるため、それほど負担なくプレーできるだろう。しかし一般の高校生は、男子にかぎっても平均体重は60キログラム程度にすぎない。そう考えると、平均体重85キロを超えるプロ野球選手が使うものよりも重いバットを、硬式野球を行う高校生全員に強制していることは問題であると言わざるを得ない。
高校球児の健康については、しばしば「甲子園野球での球数制限」などの問題に限定して議論されてきた。他にも、高野連はユニフォームやグローブ、バッティング手袋やスパイク、サングラスの着用有無に関して規制を設けており、こうしたファッション規制も批判されることがある。
しかし、高校生にお金と労力をかけさせ、心身に負担をかけるバット規制のような問題は、改めて「大人たち」の側の動機も含め、問い直されるべきだろう。