だが時すでに遅し。コールドプレイのフロントマン、クリス・マーティンが、ステージ上で「あの二人は不倫をしているか、それとも単にとてもシャイなだけかのどちらかだね」とイジったその瞬間から(詳細は下のTikTok動画で見られる)、この映像は不可逆的な運命をたどることになった。
この様子を映したTikTokの投稿は1000万回以上の「いいね」を獲得し、メディアも次々と報道。あっという間にミーム化し、米メジャーリーグのキャラクターにもネタとして再現された(動画)。結果として、バイロン氏は一両日中に即辞職、カボット氏も1週間ほどで辞職へと追い込まれた。
@instaagraace Full Coldplay #kisscam video! Choose your character in the comments #coldplaygate #birthdayboy #bananagirls #thegraduate #legitimatecouple ♬ original sound - grace
「明日は我が身」愛は盲目だが、Kiss Camは見ている
Love is blind, but Kiss Cam isn't. Neither is the internet. 愛は盲目だが、Kiss Camは見ている。そしてネット民も。この事件は、全世界を笑わせ、そして同時に恐怖に震え上がらせた。なぜなら、ここまで大掛かりでドラマチックではないにしても、誰もが不意に他人に盗撮されてネット上で晒され、自分が笑いものにされることの可能性に気づいた~つまり、みんな「明日は我が身」だと悟ったからだ。
ここからは、もしもあなたの会社のトップが同じ目にあったら、どう対応するのが正解だったか?という視点で考えていきたい。バイロン氏とカボット氏、この二人は巨大スクリーンに自分たちのバックハグ姿を映し出された瞬間、いったい何をすべきだったのだろうか?
筆者は当初「変顔&ピース戦略」で逃げ切れたのではないかと考えた。
バイロン氏が何もなかったかのように最小の動きで手をほどき、カボット氏の肩に「えっ、間違い間違い、カップルじゃないよ☆職場の同僚でーす」感満載で手を置いて、二人で一貫して変顔やピースをし、これといって面白みもない匿名の平凡な中年コールドプレイファンとして、カメラをやり過ごす。
あるいは、カボット氏が体に回された手に突然「何すんのよ」と抗議し、バイロン氏がチューを迫るふりをして、カボット氏がグーパンチでもするふりをしたら「モテない中年乙」「これだからセクハラオヤジってやだよね」と、寒い笑いで見逃されたかもしれない。過剰に釈明せず、イタい中年のふりを続けていれば、ここまで大ごとにはならなかったのでは……と。