装丁も、漫画というよりは勉強の学習参考書のようなちょっと地味なデザインになっており、学校の図書室や進路指導室に置いても違和感がないように作られている(これについては当時の担当編集者の佐渡島庸平氏が後に意図的にそうしたと語っている)。

 とにかく異色の作品であり、ここからの教育関係のドラマの特異点的な存在になったと言って良いだろう。自分がそう考える理由は主に2つある。「受験モノ」と呼ばれるテーマを作り出したことと、「学校の先生以外の先生」の教育ドラマを生む系譜を作ったこと。この2つである。順番に説明したい。

 まず、このドラマ以降、受験をテーマにした作品がたくさん登場することになった。2007年放送の「受験の神様」、2017年放送の「下剋上受験」など、「受験モノ」と呼ばれる新しい教育ドラマが登場することになったのである。

 とはいえ、ここで1つの疑問がある。受験というものはそれまでの時代もずっと存在していたのであり、むしろ日本での過熱化は1960年代の第一次ベビーブーム世代や1980年代の第二次ベビーブーム世代による方が苛烈だったはずである。

 それがなぜ、この2005年のタイミングになってやっと受験をテーマにした作品が作られるに至ったのか?それはおそらく、受験の地域間格差の影響があるのではないかと感じる。

衛星授業でどこでも受講が可能に
予備校は都会から地方へ事業拡大

 1980年代まで、塾・予備校は「都会のもの」というイメージが強かった。現在まで続く大手予備校(代々木ゼミナール・駿台予備学校・河合塾・東進ハイスクール)も、1990年代初め頃は地方都市への展開をそこまで進めてはいなかった。その影響もあってか、受験は都会の方で盛り上がっているもの、というイメージが全国的にあったと言われている。

 教育ドラマは、大人も子供も自分ごととして見ることができる。教育というのは全国どこでも行われていることだ。しかし「大学受験」というものは、全国どこでも同じように行われているものではなかったのである。