西側メディアの
冷ややかな反応
西側メディアの評価も厳しいものであった。英『フィナンシャル・タイムズ』紙は「中国はポスト・アメリカ(=ポスト戦後世界)の世界を構想している」としつつも、その試みは限られた仲間内にとどまると指摘した。
https://www.nikkei.com/prime/ft/article/DGXZQOCB040S60U5A900C2000000
また、英『ガーディアン』紙は「反欧米の象徴的演出だが、包囲網は限定的」と論じ、米『ワシントン・ポスト』紙は「新世代兵器の誇示はアメリカへの挑発である」と分析した。
https://www.theguardian.com/news/ng-interactive/2025/sep/06/xi-jinping-vladimir-putin-kim-jong-un-optics-new-world-order
https://www.washingtonpost.com/world/2025/09/02/china-military-parade-world-war-anniversary/
一方、香港メディア『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙は「同盟国からは称賛されたが、西側は冷淡であった」と報じており、軍事パレードの外交的訴求力の乏しさを表に出している。
https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3324194/reviews-are-chinas-allies-give-top-marks-parade-west-not-won-over
今回の軍事パレードは、国際的には中国が孤立している現実が浮かび上がるものになってしまったのである。
プーチン大統領に
憧れる習主席
習主席の演出は、しばしばロシアのプーチン大統領と比較される。
プーチンは憲法改正を通じて事実上の終身大統領体制を固め、治安機構と軍を掌握しており、文字どおり押しも押されもせぬ国家トップである。ウクライナ戦争により物不足が起きても、大規模な軍事パレードを利用して「祖国防衛」「歴史の勝利」を強調し、支持基盤を固めて自らの支配を正当化できる影響力を有している。
習主席も党規約改正によって国家主席の任期制限を撤廃し、同じ道を歩もうとしているが、プーチン大統領と比べると、その足場はもろい。
習主席はプーチン大統領と世間話の際に「不死」について語り合ったと報じられたことは、彼らの価値観の近さを象徴している。
だが、両者には決定的な違いがある。
最も大きいのは、プーチン大統領が治安機構と軍を盤石に掌握しているのに対し、習主席は人民解放軍の掌握に成功しているとは必ずしも言えない点だ。
経済の失速や不動産危機、若者の失業問題など社会基盤の揺らぎも深刻である。プーチン大統領が「完成形」に近い権威主義体制を築いたのに比べ、習主席は「あやかりたい」という願望を抱きつつも、その地位は不安定なのである。