台湾併合に向けて
アピールしたものの…

 北京における軍事パレードでは、中国が台湾併合をにらんで開発を進める新型兵器が前面に押し出された。

 特に注目されたのが、極超音速ミサイル「東風-17(DF-17)」、射程延伸型の弾道ミサイル「東風-26」、さらに最新鋭の無人攻撃機や水陸両用強襲車両であった。

 これらはいずれも、台湾防衛線を一気に突破し、米軍の介入を抑止することを狙った「対台湾作戦専用兵器」と言える。さらに極超音速兵器は、台湾周辺に展開する米空母打撃群や基地に対し迅速に打撃を与えられると宣伝されており、中国側の「台湾有事の勝算」を誇示する象徴となっている。

 とはいっても、これらの兵器群が台湾侵攻の成否を決めるわけではない。

 たしかに中国は、ミサイルと空海戦力を駆使して台湾に圧倒的な火力攻撃を浴びせ、短期間で制空・制海権を奪取する能力を示している。だが、台湾を「攻め落とす」ことと「統治する」ことは難易度の次元が違っている。

 台湾には2300万人の人口と高度に発達した社会基盤があり、たとえ攻め落とせたとしても、統治に必要な陸軍を運ぶ能力に欠ける。また、仮に上陸作戦に成功したとしても、その後の占領統治には膨大な兵力と長期的な治安維持が不可欠になる。

 実際、パレードに並んだ兵器は「攻撃」と「威嚇」には有効でも、「住民統治」や「政治的安定化」を保証するものではない。逆に、武力行使によって台湾社会の反中感情は決定的に高まり、アメリカや日本などの支援を呼び込む可能性が高い。

 パレードで示された兵器は、中国が台湾に軍事的圧力を加えうる力を誇示する一方で、台湾統合の現実的手段にはなり得ない。攻めることはできても、支配はできないのである。

 このギャップは習指導部が台湾への武力行使について抱える最大の戦略的ジレンマである。

 なお、パレードで特に注目された兵器は下記のとおり。

・極超音速ミサイル「DF-17」「DF-26」
・空中・海上・陸上の核三位一体兵器(JL-1, JL-3, DF-31BJなど)
・無人攻撃機・無人ヘリ・海上ドローン
・対UAVレーザー・マイクロ波兵器