慶應中等部普通部に続き、生え抜きの校長が誕生した慶應義塾中等部(東京・港区)

2025年、首都圏の私立中高一貫校では46人の新校長が誕生した。大学の系属・付属校での校長人事の新傾向、「プロ校長」の動向など、今回は共学校の様子を見ていきたい。(ダイヤモンド社教育情報)

注目の「プロ校長」

 私立中高一貫校の多くは、教職員を合わせても100人に満たない小規模な組織のため、教育現場の責任者である校長の采配次第で、学校の運営が大きく変化することも珍しくない。その生命線を握る生徒の募集活動にも、校長のキャラクターが大いに影響する。

 2025年、首都圏の私立中高一貫校では46人の新校長が就任している。他に、東京会場で入試を行うような学校も含め、把握している限りの状況をお伝えする。今回は共学校を、次回は男女別学校を取り上げていきたい。

 公立校では、50歳前後で校長職に就くと、人事異動で2~3校の校長を担う例が珍しくない。1期3年が普通の私立校の場合、教頭や副校長を経ての内部昇格が圧倒的に多い。生徒募集の責任者である入試広報部長もキャリアパスとなっている。大学系列校では、複数の付属・系属校間を異動する例も見られる。中にはスカウトされて、各地の学校を渡り歩く「プロ校長」的な例も見られる。

 まずは「プロ校長」と目される3人から見ていきたい。最初は開智所沢中等教育学校(埼玉・所沢市)の新校長となった小野正人氏である。東京女子学園が23年から芝国際に衣替えする際の開校準備室長として理事長補佐を務めたものの、在任2年ほどで、24年に1期生を迎えた開智所沢の校長代理に移っている。

 初代校長は青木徹理事長が兼任していたが、二度の入試を経て、正式に校長となった。3回目の入試となる26年には、募集定員を60人増の360人に変更、医進クラスの対象者を広げ、複数回受験加点を30点とするなど、受験生へのアピールにも怠りがない。

 小野氏は、早稲田大学卒業後、塾の海外展開を担い、女子校だった須磨学園(神戸市須磨区)の共学・中高一貫化に関与して注目された。男子校の武蔵工業大学付属が東京都市大学付属(東京・世田谷区)に校名を変更、進学校にかじを切るタイミングで2代目校長となり、I類・II類の類別入試を導入することにより、上位校への足がかりを固めた。

 1929年のサレジアン・シスターズ(本部・ローマ)の来日に始まる学校法人星美学園の北区赤羽台と世田谷区大蔵にある中高校長職は、これまでシスター(修道女)が担ってきた。世田谷の方は森下ワカヨ校長のままだが、赤羽の方は森下愛弓氏からこのたび交代することになった。

 サレジアン国際学園(旧星美学園/東京・北区)の新校長に就いた宗像諭氏は、語りのうまさに定評がある。広尾学園(旧順心女子学園/東京・港区)で教務本部長として共学化と学校改革に関与、開智日本橋学園(東京・中央区)では副校長として同校の国際バカロレア認定などに携わった。

 初めて校長となった神田女学園(東京・千代田区)では日本と海外の高校卒業資格を得られるダブルディプロマプログラムを導入、23年からは松本秀峰中等教育学校(長野・松本市)の校長も務めている。一足先に姉妹校であるサレジアン国際学園の学園長となった大橋清貫・新時代教育研究所代表とは、大橋氏が会長だった進学塾で宗像氏は統括責任者を務めた縁もあっての今回の就任といえそうだ。
 
 3人目はブレット・マックスウェル氏である。オーストラリア出身で、20代で来日して以来、私立高校や公立小中学校などの英語教師を務め、湘南で「マックスウェル英会話」というスクールも経営。言語学教育修士号と経営学修士号(MBA)も取得、京都聖母学院小学校と同中高の校長から22年に森村学園(横浜市緑区)の校長となった。このたび、宗像諭氏の後任として松本秀峰中等教育学校の校長に就いている。

 森村財閥創設者でクリスチャンの森村市左衛門が立ち上げた森村学園の新校長には、この学園に勤務してから30年が経過したという生え抜きの岡真由美氏が就任している。