大学系列校の校長も内部昇格が主流に

 早慶とMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)と称される人気私立大学の系列校は、中学受験でも人気が高い。校長職は大学の教員(教授)が担う例は付属校で見られ、学校法人を異にする系属校では内部昇格という例が多い。早慶の系列校では、学校改革の一環として、中高教員の内部昇格に切り替える動きが進んでいる。

 早稲田大学系属早稲田実業学校(東京・国分寺市)では、前校長で商学学術院教授の恩藏直人氏が学校長となり、数学科教員で硬式野球部部長を務めた佐々木慎一氏が副校長から中・高等部の校長に就任した。早稲田大学大学院理工学研究科を修了し、東京都立葛飾商業高校に4年間勤務してから早実に移った。

 自らも高校球児だった佐々木新校長は、葛飾商業で教え子から諭され「人それぞれに正解がある」という経験を得たことで、早実硬式野球部の「やらされては面白くない。自ら考えてやってこそ楽しい」という指導方針に磨きを掛けることになったと言う。同時に、初等部は早実OBの菱山和弘氏が校長に就いた。早大卒業後、中・高等部の教頭や副校長の後、国際交流担当チーフを経ての就任である。

 慶應義塾では、普通部(横浜市港北区)の部長は22年就任の森上和哲氏、その前任である荒川昭氏とプロパー人材の昇格が続いていた。言語学者の井上逸平・慶應義塾大学文学部教授が前任だった中等部(東京・港区)でも、国語科教諭の松本守氏が新たな部長となった。東京学芸大学出身で、都立府中工業高校、桜美林、早稲田高等学院の非常勤講師を経て、 03年に同校教諭となっている。

 26年から明治大学付属世田谷となる日本学園(東京・世田谷区)では、中学部長、教頭を経験した谷口哲郎氏が新校長に就いた。1885年創設で140周年を迎えた伝統校であり、共学化に備えた新校舎も完成し9月から使用が始まった。「調査研究」と「キャリア教育」という2つのプログラムを主軸とする同校のセールスポイント「創発学」の推進役でもあり、順当な昇格といえそうだ。

 東京多摩地区では、対照的な新校長が誕生している。中央大学附属(小金井市)では、金融と経営の専門家という中央大学法学部の安藤浩一教授が新校長となった。東京大学経済学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に勤務、一橋大学で修士号、東京大学で博士号を得ている。

 一方、法政大学(三鷹市)は、日本体育大学を出た体育科教員の植月文隆氏が新校長となった。かつて監督を務めた硬式野球部は、西東京大会4回戦で國學院大學久我山に敗れている。兄弟校の法政大学第二(川崎市中原区)では、同校で35年間にわたり教員を務めてきた生え抜きの笠原浩之氏が副校長から昇格、4年間校長を務めた五十嵐聡氏の後任となった。

 東海大学付属相模(相模原市南区)の新校長である中出光政氏は、法政大学出身の社会科教員として、高輪台(東京・港区)で教員生活をスタートした後、相模の教頭を9年間務め、教頭として浦安(千葉・浦安市)に移った。その間、大学本部の初等中等教育部にも勤務するなど、東海大学の付属校のエキスパート的存在である。